日本人に生まれて

 今から10年前に現在千葉県知事の森田健作氏が脚本や総指揮をとって制作した映画『I am 日本人』を見たときには、古き良き日本の姿が失いつつあることに警鐘を鳴らしているなあと感じました。当時は海外に1年に1、2回ほどしか行かなかったので、外から日本を見る機会が少なくこのことに関しそれほど危機感はありませんでした。しかしその後新しい出会いや仕事の関係で海外に行く機会が多くなってからは、将来の日本に不安を感じています。特に東アジアや東南アジアの発展途上国を訪問すると、様々な面でいかに日本が恵まれているかを痛感します。まだ訪問したことはありませんが、アフリカ諸国など世界には1日1ドルの生活ができない最貧国と呼ばれる国も存在します。日本ほど風土に恵まれ治安が良く、水を安心して飲むことができ、また社会的インフラが整い、生活保護や医療制度など社会保障がある程度整備されている国は他にはありません。こう書くと「日本にも貧しくて恵まれない人はたくさんいる」と言われそうですが、全体論から考えれば多数を占めているわけではありませんし、また貧しいレベルが違いすぎます。餓死者の数、乳幼児の死亡率、平均寿命、GDPなどどれをとっても比較しようのないほど裕福な国であることは否定できません。しかし、このように恵まれている現状を顧みることなく不平不満を口にする人や、自分本位の行動をとって法を犯す人や他人に害を与える人が昔よりかなり多くなってきたと感じています。このような方々には『知足』という言葉を是非知っていただきたいです。古き良き日本にはこの言葉を感じる行為が当然のように行われていたのでしょう。私は『団塊の世代』の次の世代ですから、まだ戦後を感じることができた世代です。当時はごく一部を除いて、私の実家も含め皆貧しい生活でしたが、両親や近所の方々は互いに協力し合いながら生活していたことを記憶しています。近所の子供を預かったり面倒を見る、田植えや稲刈りの手伝いをする(農家以外の方が手伝うのです。自分もやらされました)、皆で協力して餅つきや大掃除を行うなど地元コミュニテイが確固たるものとして存在していました。でも昨今はどうでしょう。時代の違いはありますが、近所付き合いもなく、関心もない。また町内の設備を使用しているにもかかわらず町内会にも入らない。マンションンいたってはその組合活動を断るなど、あまりにも身勝手で残念な行動が多くなり、コミュニテイの崩壊につながっているのが現状でしょう。少子高齢化の時代だからこそ、かつての日本の姿に立ち返るべきだと考えます。「日本人に生まれて良かった」と心から思うことができれば、皆もっと周囲に優しくなれるし、『知足』を実行できるはずです。