巡回セールスマン問題と量子コンピューター

 先日ビジネス誌で『巡回セールスマン問題』なるものを初めて知りました。セールスマンがいくつかの訪問先を1つずつすべて巡回して自社に戻ってくるとき、移動距離が最小になる経路を探す問題だそうです。簡単そうですが自社を含めた巡回先が1ヵ所増えるたびに組み合わせが爆発的に増えていきます。4ヵ所の組み合わせは3通りですが、10ヵ所になると組み合わせは何と181,440通りに増え、30ヵ所の場合は4.42☓10の30乗通りになるとのこと。電卓をたたいても出て来ない数字です。この問題を解くには日本が誇るスーパーコンピューター「京」、1秒間に1京回の計算ができますが、これを使っても1400万年かかるそうですから気の遠くなる話です。しかし、最近開発著しい『量子コンピューター』が更に進歩すれば、一瞬で答えを導き出せるというのです。この差には感嘆を通り越して「マジ! ヤバイ!!」と若者言葉を使いたくなってしまいます。実際今年3月に独フォルクスワーゲンは中国北京を舞台に1万台のタクシーの中から400台をランダムに取出し、その位置データーを使って都市部と空港を結ぶルートの最適化を試みました。居場所が異なる400台に対し、個別に3つのルートを提示し、それぞれのタクシーがどの道を選べば最も渋滞が少なくなるか計算したところ、組み合わせは3の400乗となりました。従来のコンピューターでは処理しきれないため『量子コンピューター』を活用したのです。『量子コンピューター』の商用化は2011年に始まり、価格は1台10億円で既に数10社が顧客になっているとか。実用化にはもう少し時間がかかるそうですが、この高速処理能力により、創薬やAIの分野で新発見が相次ぐ可能性があり、様々な分野に飛躍的な進歩をもたらすのも遠い将来ではなさそうです。とてもワクワクしますね。でもあまりの科学の進歩の速さに頭がついていかない自分がいますが……。