受け継ぎたい祭り PART5

 紀伊半島の南東部に位置する熊野市の山奥には1340枚もの田が隙間なく並ぶ日本最大級の棚田があります。6月のある夕暮れ時、田と同数のキャンドルがあぜ道に灯され、あたりは幻想的な空気に包まれます。この地の夏の風物詩「丸山千枚田の虫おくり」です。虫おくりとは害虫を駆除し、その年の豊作を祈願する行事のことで、戦後まで行われましたがしばらく途絶え、平成16年より約半世紀ぶりに復活したものです。地元の子供たちが「虫おくり殿のお通りだい」と掛け声を挙げて、あぜ道を進みます。優しくてしんみりする祭りです。